地域開発における大きなハードルのひとつに安定したインフラの欠如が挙げられますが、なかでも安定した電力源を手頃な料金で利用できるか否かはきわめて重要です。これがなければ住民の生活も企業の運営も不安定になり、常に停電のリスクにさらされてしまいます。
僻地や開発途上国の多くのコミュニティでは、標準的な配電システムのような電力供給インフラが存在しません。今日でも、こうした地域のほとんどの住人は機械の動力にディーゼル発電機を利用し、照明は灯油に頼っているのが現状です。こうした電力源はコストが高く、騒音と大気汚染の原因にもなります。住宅でも職場でも、料金が手頃で環境を汚さない電力源を必要としています。
New Sun Road 社は気候変動と世界のエネルギー貧困に対するソリューションの実現を目指す、カリフォルニア州公認のベネフィットコーポレーションです。同社は僻地の開発途上経済で活動する現地の団体と連携して、環境汚染のない再生可能電力システムの設計、建設、運営を行うための財政、エンジニアリング、経済、環境保全の分野の専門家を派遣します。
この有能なエンジニアグループは、ウガンダのグリーンエネルギーの新興企業GRS Commodities社と提携して、ウガンダ・ビクトリア湖のセセ諸島で環境負荷の低い電力の安定供給を目指しています。このモデルシステムの目標は、太陽光発電による電力をキトボ島のビジネスに手頃な料金で安定供給することです。
ビジネスの課題
太陽光発電の電力網の導入は容易な事ではありませんが、このソリューションでは最も実現しやすい部分と言えるでしょう。太陽光発電は経済的で設置も比較的容易なため、電力源として当然の選択肢です。
最大の難関は、各地点の現場で作業することなく、電力網の管理と適切な保守を確実に行うことにあります。電力網をリモート監視する機能があれば各地点を1か所で一元監視できるので、New Sun Road社はサービスをセセ諸島全体に効率よく拡大することができます。しかし、通信手段が限られる僻地で、どうすれば太陽光発電のスマートグリッドの監視と管理をリモート操作できるのでしょうか?
現地にインターネットサービスプロバイダがないため、これはかなりの難問です。そこでチームは、グローバルセルラーネットワークを利用してリモート接続を実現することに決めました。
通信の問題のほかにNew Sun Road社が克服しなければならないもうひとつの大きな難関は、ネットワークハブ内で高温に耐えられるデバイスを見つけることでした。このデバイスは直射日光の当たるNEMAエンクロージャに収められるので、過酷な高温条件でも機能することが絶対条件でした。
ソリューション
New Sun Road社が選んだのは Digi TransPort WR11 XT です。現地で利用可能な3G HSPA+ネットワークに接続できるので、電力網のリモート監視が可能になります。WR11 XTはグローバル3Gネットワークへの安定した接続を提供し、ネットワークユーティリティハブの高温の動作環境に対する耐久性も備えています(下の写真を参照)。
New Sun Road社のチームは、停電などの問題によって顧客への送電が停止した場合にも電力網を効果的にリモート管理できることを確認する必要がありました。 Digi Remote Manager
を利用することで、運営チームは簡単に新しいデバイスのコンフィグレーションやファームウェアのアップデートを配信し、ネットワークの問題をリモートで診断して解決できます。また、クラウド管理プラットフォームを利用することでデバイスの温度を監視できるため、ユーザー定義した温度のしきい値に達した場合やデバイスの状態に変化が起きた場合に、アクティブ監視に切り替えるようチームに警告することができます。
New Sun Road社のソリューションでは、太陽光発電システムとエンドユーザーの電力使用量の両方をリアルタイムで分析してリモート制御するために同社が独自に開発したカスタムソフトウェアアプリケーションも使用します。分析エンジンによってチームは問題が発生する前に予測できるので、適切な保守を実施し、ユーザーのニーズを把握し、常にシステムを最適化することができます。
成果
2015年夏、New Sun Road社はウガンダの新興企業GRS Commodities社とカリフォルニア大学バークレー校CAL-RAEグループと共同で、キトボ島において初の24時間365日稼働する100%太陽光発電のメーター式電力サービスの提供を開始しました。
現在では34件のビジネスおよび住宅の顧客が電力供給を受けて電気料金を定期的に支払っていますが、ディーゼル発電機からソーラーマイクログリッドに切り替えることでエネルギーコストを平均50 %も削減することができました。このシステムは保守コストを賄い設備投資を回収するための十分な収益を上げているので、持続可能なソリューションであることが実証されました。
New Sun Road社のソリューションは、技術的な知識を現地のパートナーおよびコミュニティと共有することも重視しています。現地の技術者を育成し、学生にインターンシップの機会を提供することで、専門家が現場の支援に回ることができ、若いエンジニアはソーラーシステムの設計と通信技術の専門知識を習得することができます。
モデルシステムの成功をうけて、New Sun Road社は今後2年間で電力サービスをセセ諸島のすべての有人島に拡張することを目指しています。