赤外線熱画像撮影や農薬散布、大学構内のセキュリティから動画制作、不動産マーケティングに土地測量まで、あらゆる分野で活躍するドローンは一大産業として急速に発展しています。高性能ドローンの設計と製造を手掛けるトップランナーとして名を馳せているフランス企業の Flying Eye 社は、現在では幅広い業界と用途に適した各種ドローンを展開しています。
ビジネスの課題
業界の第一人者であるFlying Eye社のドローンは世界各国の空を飛び回っています。形もサイズもさまざまなドローンには各種センサー、カメラ、バッテリー、無線操作機能を搭載できるため、あらゆる業界で利用価値が高まっています。Flying Eye社のドローンは農作物に農薬を散布したり、僻地の絶景の写真や動画を撮影したりと活躍の場を広げ、顧客にとっても対応範囲の拡大とアジリティの向上に貢献しています。
しかし、Flying Eye社の共同創設者でありテクニカル・ディレクターのアレクサンドル・トマ氏は、安全性に関して重大な問題が生じていると指摘します。小型航空機と呼べるドローンが空中を縦横無尽に飛び回り、時には人々の頭上すれすれの高さを飛ぶようになったためです。「ドローンは安全であることが絶対条件です。想定外の出来事や故障に対応するため、設計段階から緊急事態への対策も備える必要があります。当社ではドローンの信頼性を確保するためさまざまな対策を講じているうえ、電子部品は試験を重ねてドローンが突然シャットダウンしないよう確認しています。プロペラは耐久性の高い素材を使って設計し、ドローンができるだけ長く飛び続けられるようにバッテリー技術には時間も費用も惜しまず投資しています」とトマ氏は語ります。
もちろん、故障や操縦の失敗が100%起こらない航空機などありません。テクニカルエラーや操縦者のミスによって飛行が中断されることがあるため、Flying Eye社では緊急用パラシュートと冗長通信システムをドローンに搭載しています。ここで重要な役割を果たしているのがDigi XBee® RF modules です。
ソリューション
高い安全性レベルを保つため、Flying Eye社のドローンは設計・組立段階でバックアップのパラシュートを採用。ドローンの故障や飛行中断が発生した際にリモートで起動することができます。「化学反応によって開くパラシュートがドローンの破損を防ぎます。しかしそれよりも大切なのは、落下するドローンが下にいる人々にぶつからないようにして事故を防ぐことができるということです」とトマ氏は言います。
さらに安全性を高めるため、操縦者からドローンへの接続は2つの独立したRFリンクを利用し、2つ目のリンクは緊急時にパラシュートを開くためだけに使用します。Flying Eye社ではDigi XBee® RFモジュールを採用して2つの個別無線リンクを制御しています。XBeeモジュールは、 ポイントツーポイント接続用XBee® 802.15.4 を利用して最大約3 kmの屋外見通しレンジと最大速度111 Kbpsのデータ転送を実現し、クラス最高級のワイヤレス接続をドローンにもたらしています。
XBeeはプログラミング不要なので、DigiのフリーソフトウェアXCTUを使用するか、シンプルなコマンドセットを使って簡単に設定ができます。XBeeモジュールは複数の国で使用できるように電波法認証取得済みのため、さらに開発コストを削減し発売までの時間を短縮できます。ワイヤレスソフトウェアは独立しているので、RF性能やセキュリティを犠牲にすることなくアプリケーションを開発することができ、認証を追加取得する必要もありません。
Flying Eye社のリモートコントローラはデュアルチャンネル設計です。1つのチャンネルでドローンの操縦、カメラ、センサー起動など飛行中の操作をすべて制御します。もう1つのチャンネルはパラシュート開閉の制御専用として搭載されています。飛行中に異常が発生した場合、操縦者はリモコンのスイッチを押すだけです。Digi XBeeがドローンに送信する信号によって操作が即時シャットダウンし、化学反応によってパラシュートを開くので、ドローンが地上に降りる時の衝撃も最小限に抑えられます。
「この緊急対応システムのおかげでドローンの売上が伸びました。特にフランスでは法律で定められた仕様なので、競合製品との差別化を図ることができたからです。さらにドイツ、スイス、イタリアでも顧客を獲得しており、スペインでも発売予定ですが、各国の法規制も順守しています」とトマ氏は説明しています。
「Digiを選んだのは、シンプルで信頼性が高く、当社のアプリケーションに必要な帯域幅に対応しているためです。XBeeは当社のニーズに完璧に応えてくれるうえ、コスト効率も非常に高いので、これ以上の選択肢など考えられません。」
2016年は4年に1度開催されるサッカーのUEFA欧州選手権の開催年にあたり、Flying Eye社のドローンが各都市とスタジアムの様子を空中から動画で撮影します。この映像は試合前と試合中にテレビで世界に放送されます。
「Digiのおかげで安全機能を搭載したドローンは売れ行きが好調です。今後も販売数を伸ばしながら、さらに画期的な製品を開発する予定です」とトマ氏は語っています。