Global Industries社の一事業部門であるNebraska Engineering Company (NECO)はネブラスカ州ノースオマハに本社を置く農業機器のエンジニアリングと製造に特化した会社です。世界各国の農業に従事する顧客に、高付加価値の穀物乾燥機、穀物加工装置、散気装置を提供しています。
NECO社の、“Giving you great gains for your grains…”、つまり、穀物(グレイン)で大きな利益(ゲイン)を、というキャッチフレーズは単なる言葉遊びではありません。顧客の事業内容を親身になって理解しているNECO社は、農家の経営を大幅に進化させるコネクテッドテクノロジーシステムを導入しました。
ビジネスの課題
現代の穀物生産者は、穀物の乾燥、加工、加水調整のため効率的なソリューションを求めています。それも当然のことで、穀物の乾燥作業は農家にとっても、穀物を仕入れて保管する顧客にとっても非常に重要な作業だからです。
「穀物乾燥機を稼働させるのは、1年にせいぜい2カ月、場合によってはたった2週間ですが、非常に重要な作業です。当社の顧客にとって、その肝心な時期に穀物乾燥機が故障して動かないなどということは許されないことなのです」と語るのは、NECO社エンジニアリングマネージャーのTravis Toline氏。「穀物乾燥機の稼働状態は常に把握していなければなりません。とはいえ、乾燥機がきちんと動いているかを四六時中見張っているために人手を割けません」。
穀物乾燥機が故障した場合は、作業が完全に中断されていまいます。
NECO社ディーラー開発・技術サポート部マネージャー、リー・ゴールドホーン氏によれば、この機械に数十万ドルを注ぎ込んでいる農家もあったといいます。「昔からこの時期になると乾燥機を徹夜で見張っていたものです。この機械が経営のすべてを支えていたからです。農家は乾燥機が心配で一睡もできず、夕食さえろくに食べられないのです」。
ソリューション
こうした状況を熟知していたNECO社は、穀物乾燥機の運転を支援するリモート管理システムを作ろうと決めました。それが顧客の事業はもちろん、自社の事業をも進化させるからです。
「顧客に最高の製品を提供するうえで次に必要なのはリモートアクセスと制御でした」とゴールドホーン氏。
このレベルのアクセスを実現するため、NECO社のチームはシステムを作り上げる必要があることを理解していました。まずは、すでに現場で稼働している通信リンクを利用するハードウェア製品から始めました。現在では穀物乾燥機の1台1台にConnectPort® X4ゲートウェイが搭載されています。ConnectPort® X4ゲートウェイがNECO Commander PLC Dryer Controlからライブデータを収集し、セルラー接続を経由して Digi Device Cloudへ送信します。この情報はDevice CloudからNECOのカスタムWebアプリケーションCOMMANDnetへと送信されます。このアプリケーションには農家や卸売業者、そしてNECO社が簡単にアクセスできるため、送信された情報にもすぐに対応できます。
成果
リモート管理システムの導入により、農家では穀物乾燥機のそばにいなくても稼働状態を把握できるようになりました。テキストメッセージや電子メールのアラートを受信したら、スマートフォン、タブレット、PCを使ってアプリケーションにログインし、稼働状態を分析できます。
「顧客によっては、人件費を30%も削減することができました。乾燥機に張り付いて状況を監視する必要がなくなったからです」とゴールドホーン氏は指摘します。
NECO社の乾燥機は、トウモロコシ、小麦、大麦、オート麦、大豆などを乾燥します。従来、農家では長期保存のため作物の水分を約15%まで乾燥していました。こうすることで、価格が最も良い時期に市場に出すことができるのです。価格の変動が早いと、農家は大きなチャンスを逃してしまいます。現在では、テクノロジーのおかげでNECO社の顧客はどこにいてもプロセスの変更が可能です。
NECO社の顧客はライブデータを見ながら乾燥温度、排出水分セットポイント、メタリングロール速度の調整や乾燥機の停止もリモート操作できます。さらに、NECO社の販売代理店とNECOチームは、問題のトラブルシューティングとCommander Controlプログラムアップデートのインストールをリモートで行って顧客をサポートします。
かつては、国外で穀物乾燥機の問題が発生すると、販売代理店やNECO社の技術者が飛行機に乗って直接出向き、問題を特定して修理をしていました。現在ではチームはリモートで機械にアクセスし、問題を発見して対処し、必要に応じてアップデートをインストールすることができます。
販売代理店は顧客訪問の回数を減らすことができたため、このサービスが今後は新たな収益源になる可能性もあります。販売代理店は顧客に新たなレベルの対応とサービスを提供できるのです。「機械に修理が必要な場合は、リモートサポートの修理依頼2、3回分でCOMMANDnetサービスの元が取れます」とToline氏。
現在、NECO社の顧客は数百台のコネクテッド乾燥機を現場で利用しています。農家は経営を最適化することができ、もちろん乾燥機のことを心配せずに夜もぐっすり眠ることができます。NECO社は顧客の経営を改善するための努力とともに、製品の改善も引き続き行っています。COMMANDnetについては国外顧客向けの翻訳版など新たな機能も追加されました。カスタマーエクスペリエンスの改善も絶えず行われています。